今般、日本学術会議が第25期日本学術会議会員として推薦した105名の会員候補のうち、6名について内閣総理大臣が任命せず、10月13日現在、その 具体的な理由を明らかにしていません。日本学術会議法の任命規定を内閣に独自の判断権があると読む現内閣の主張については、法律を制定した国会と政府の関係など、三権分立や法体系の整合性に関する多くの問題が指摘されています。学問の自由とそれを担保する学術機関の独立性、学界と政治と社会の良き緊張関係など、これまで国際社会で共有されてきた一般原則から見ても、懸念が残るところです。とりわけ本会は、日本学術会議の高校歴史教育に関する提言をきっかけに設立され、多様な歴史的思考力の育成を通じた市民社会や民主的な法治国家の担い手の育成に取り組んできた会であること、任命を拒否された候補者の中に同様の立場から歴史教育でも成果を挙げてきた歴史研究者が含まれることなどに鑑みて、この問題を看過できないと考え、運営委員会での討議にもとづいて、声明を発出した次第です。皆様のご理解・ご協力をお願いいたします。
(参考)
○日本学術会議法
第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
第十七条 日本学術会議は、規則で定めるところにより、優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考し、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣に推薦するものとする。
○日本学術会議の要望書(「第25期新規会員任命に関する要望書」)はこちら。
政府の日本学術会議会員任命拒否についての声明
私、高大連携歴史教育研究会会長は、表記の件が憲法に保障された学問の自由や日本学術会議の自主性の尊重という原則に反するものと判断せざるをえません。また、歴史教育およびそれを通じた主権者教育にたずさわる立場から、表記の件が、現代世界にふさわしい多面的・多角的な学びを通じた思考力・判断力・表現力育成という文部科学省の教育目標とも矛盾するものと考えます。したがって、日本学術会議が菅内閣総理大臣宛に提出した「第25期新規会員任命に関する要望書」(2020年10月2日)に賛意を表明し、(1)推薦された会員候補者が任命されない理由の開示と(2)任命されなかった会員候補者の速やかな任命を求めます。
2020年10月15日
高大連携歴史教育研究会会長 勝山元照