部会のタスク
本部会は、(a)大学教養教育における歴史教育と、(b)高校で歴史を担当する教員の養成を刷新することを2つの大きな活動の柱とし、それらに共通する要素として「公民(市民)的な資質・能力」の育成という観点を強く意識して研究活動を行っています。
これまでの活動
2つのタスク、(a)と(b)とが相互に高い関連性を持つことを念頭に置きつつ、2023年・2024年度においてとくに力をいれて取り組んでいるのが、(b)に関する課題です。
これまでの活動を通じ、「歴史総合・探究」に対応し、公民的な資質・能力を育成できる教員を養成するには、個々の大学・高校教員の自助努力では不十分であり、組織的な取り組みが求められることが明らかになりました。
そこで、高校・大学に足場を置き、そして歴史学・社会科教育学それぞれに専門性を持つ会員を擁する本会の強みを生かし、教科指導と教科内容が連携し、高校歴史教師に求められる資質とは何かを考え、それを育成するためのカリキュラムを構想、実施していくことが必要だと考えました。そこで、約2年を期限とし、歴史総合をはじめとした新科目を担うことのできる教員を養成するための大学カリキュラムを構想することを目標に据え、活動を行うこととしました。
現在の活動
上述の目的意識を持ちつつも、大学カリキュラムを構想する際には、大学ごとの制度的、文化的な文脈をふまえる必要があると認識し、まずは教員養成に携わる諸機関の実態を把握し、歴史学・社会科教育学双方の観点から課題点を共有するとしました。
そこで、概ね2ヶ月に1度のペースで、歴史学・社会科教育学の専門家を話題提供者として招き、オンライン研究会を実施しています(各回の参加者は平均30~40人程度)。また、年に1、2回程度、対面での研究会を実施していきたいと考えています。
以上の活動を通じ、歴史学・社会科教育学のそれぞれが教員養成の上で、いかなる資質・能力の養成を重視し、そのために何を意識・工夫しているのか、その実践例の共有と課題の明確化を進めています。
*以下は創設時に交わされた議論の要旨
大学における歴史系の教養教育と教員養成課程のあり方を問う第5部会には、30人が参加し、岩井淳の司会のもとで議論がかわされた。参加者には、高校や大学の教員以外に大学院生も含まれていた。
最初に自己紹介を行なったが、その中で各大学や高校、研究会での取り組みが紹介され、変貌を余儀なくされる歴史系の教養教育と教員養成課程の姿が浮き彫りにされ、とても興味深かった。自己紹介後に司会からお願いして、歴史系の教養教育について大阪大学の取り組みを秋田茂に、歴史系の教員養成について静岡歴史教育研究会の実践を浜松西高校の松井秀明にお話しいただき、意見交換を行なった。そこでは、大学の教養教育が高校教育からの入口となり、高校教員などを養成する教員養成が高校への出口となることが確認され、ともに高大連携の観点から見て重要な意味をもつことが認識された。
今後は、教養教育と教員養成課程について各大学のデータを集め、現状を把握することが必要であろう。その作業に着手し、提言をまとめるためのワーキンググループを高大双方から8名選出した。部会長には岩井、副部会長に戸川点(都立町田高校)が選ばれた。今後の活動はメールでの提案・討議などを軸としながら、第5部会や高大連携歴史教育研究会のメンバーとの意見交換を進めていきたい。