第3部会 《テーマ》歴史を通貫する概念の整理と精緻化

部会のタスク

 発足時の第3部会の活動目的は、高等学校における歴史系新科目のあり方を担当するものであった。現在の活動の中心は、OECD等が提唱している「概念に基づく歴史的思考力」や、学習指導要領で強調されている歴史的見方・考え方を育成する基盤である「歴史を通貫する概念」の精緻化とリスト化を進め、関連するコンテンツや、その活用方法を研究することである。「歴史を通貫する概念」は、歴史総合において学習した概念の活用法を世界史・日本史の全時代に拡張し、ひいては中等教育と高等教育とを接続するための手段となるものとしたい。

これまでの活動

 当初、第3部会は、目的どおり歴史系新科目のあり方の研究のために、教科書等の研究を始めようとしたが、教科書には研究上さまざまな制度的な限界があることが判明したため、他の方法を模索した。ようやく発見したのが、OECD等が提唱している「概念に基づく歴史的思考力」を実現するための授業の基盤である「歴史を通貫する概念」を活用した授業法を整備することである。

現在の活動

 普段の活動はメーリングリストを使って意見交流を行っている。ワーキンググループ(現在22名)を結成しており、月に1回程度の割合で、ZOOMミーティングによって研究を進めている。参加者は毎回おおよそ10人程度である。昨年度に得られた成果は、「歴史を通貫する概念」の研究が進んだことと、それが桃木至朗氏の「歴史の基本法則」との類似性の発見であり、第10回総会にて発表を行った。今後は「歴史を通貫する概念」のさらなる充実と、それに基づいた授業方法の研究が必要である。

歴代部会長
  • 君島和彦(2015年7月~2017年7月)
  • 西村嘉髙(2017年7月~2022年7月)
  • 藤村泰夫(2022年7月~2024年7月)
  • 大橋康一(2024年7月~)
歴代副部会長
  • 藤村泰夫(2015年7月~2022年7月)
  • 中田奈穂美(2021年7月~2024年7月)
  • 井本幸輝(2021年7月~)
  • 山本昭宏(2022年7月~)
  • 大橋康一(2023年8月~2024年7月)
創設時(2015年)のテーマ:高等学校における歴史系新科目(歴史基礎など)のあり方
*以下は創設時に交わされた議論の要旨

 高等学校における歴史系新科目(歴史基礎など)のあり方を担当する第3部会には、40人弱の人が参加し、油井大三郎の司会のもとで活発な議論が行われた。油井は、この部会では、歴史教育の内容を現場の状況を踏まえて、ボトムアップで提案していく必要性を強調し、今文科省で検討されている「歴史基礎(仮称)」は、日本学術会議が、世界史未履修問題から明らかになった歴史教育の状況を改革する「提言」を踏まえていることを述べた。
 分科会での討論は、「歴史基礎」の具体化をめざすことを前提に、文科省の研究開発学校になっている神戸大学付属中等学校のプランなどが報告され、取り扱う時代、歴史学習の基礎学力、入試との関係、担当教員の現状など、様々な意見が出された。この出された意見を集約し、新しい歴史科目を構築していくことが今後の課題となった。そのために、ワーキンググループとして高大双方から6人が選ばれ、部会長に君島和彦(東京)、副部会長に藤村泰夫(山口県)が選ばれた。