第1部会 《テーマ》歴史的思考力の育成

部会のタスク

 発足時の第1部会のテーマは、「高等学校の世界史・日本史教科書改革と思考力育成型授業のあり方」でした。現在は、「歴史的思考力の育成」のテーマのもとで活動していますが、活動の主眼は、概念を軸にした思考力育成型の汎用的な授業実践の枠組み(カリキュラム)をどのように作るか、であると言えます。

これまでの活動

 当初、第1部会では歴史的思考力と用語精選の2つのワーキンググループ(WG)を立ち上げました。用語精選のWGの成果は2017(平成29)年10月に「高等学校教科書および大学入試における歴史系用語精選の提案(第一次)」という形で冊子化し、公にしました。しかし、用語が精選された背景が見えにくかったことから、大きな波紋が広がりました。

 2018(平成30)年3月に公開された「高等学校歴史教科書・大学入試出題用語精選基準に関するアンケート集計結果について」を分析していく中で「概念やキーワードを中心として、関連する事実用語を精選する」 「事実用語についても主要な概念と関連づけながら、極力階層化されたかたちで選定する」という第1部会の新たな活動の方向が明確となりました。2018年高大連携歴史教育研究会第4回大会シンポジウムでは歴史用語精選案にもとづく教科書試案とともに、「中高接続と高校歴史の用語・概念」における「歴史総合の概念用語案B」として、『歴史総合』を視野に、中項目ベースで概念を上位と中位に分割する試案を提案し、これをベースに活動を続けています。

現在の活動

 2021(令和3)年に『歴史総合』を対象として、「概念的知識及び重要用語」を検討するWGを立ち上げました。現在はこのWGを中心に活動しています。常時参加人数は15~20名程度です。WGでは『学習指導要領解説』の総説で示された「知識の概念的な理解の実現」つまり、従来の個別的・断片的な「知識」の獲得から、構造的・慣例的知識つまり「概念(学習内容から導き出される思考の構築物であり、文脈を持って語ることのできる知識)」の形成を重要視し、生徒が歴史の学びを通して「概念」形成していく授業実践のためのカリキュラム開発を行っています。

 そのために、ウィギンズとマクタイによる逆向きカリキュラム設計(Understanding by Design)を活用して大項目の「近代化と私たち」「国際秩序の変化や大衆化と私たち」「グローバル化と私たち」についてのカリキュラム開発すすめ、現時点では3つの大項目の概念構成図とUnderstanding by Designシートによる単元計画モデル案を完成させております。2024(令和6)年度末の公開に向けて、整理を続けております。

 なお、現在はWGの下に3つの作業部会(班)を置き、月1回のWGの定例ミーティング(オンライン)のほか、その間に作業部会(班)ごとのミーティングを挟む形で行なっています。つまり、WGメンバーは2週間に1回ほどの頻度で、オンラインミーティングに参加しています。

歴代部会長
  • 桃木至朗(2015年7月~2018年7月)
  • 児玉祥一(2018年7月~2022年7月)
  • 荒井雅子(2022年7月~2024年7月)
  • 赤間幸人(2024年7月~)
歴代副部会長
  • 小川幸司(2015年7月~2016年7月)
  • 中村薫(2016年7月~2018年7月)
  • 日高智彦(2018年7月~2022年7月)
  • 荒井雅子(2021年7月~2022年7月、2024年7月~)
  • 赤間幸人(2022年7月~2024年7月)
  • 児玉祥一(2022年7月~)
  • 美那川雄一(2022年7月~)
創設時(2015年)のテーマ:高等学校の世界史・日本史教科書改革と思考力育成型授業のあり方
*以下は創設時に交わされた議論の要旨

 教科書改革と歴史的思考力の育成を扱う第1部会には40人余りが参加し、桃木至朗の司会のもとで活発な議論がかわされた。
 自己紹介のあとの自由発言では、他の部会との関係や、歴史的思考力の内容を明確化する必要について多くの意見・要望が出されたほか、教える対象の生徒、教科書と掲載用語、資料、評価法・入試、教職教育などについても、教科書と思考力という2つの課題の間に矛盾があるという指摘を含めて、発言が相次いだ。
 これにもとづき今後、指導要領改定や新型入試の施行などに間に合うように可能な提言をまとめる方向で活動することが了承され、そのためのワーキンググループとして高大双方から9名(うち女性2名)が選出された。部会長には桃木、副部会長に小川幸司(長野県)が選ばれた。今後の活動はメールでの提案・討議などを軸としながら、加盟組織との協力による公開研究会など、活動を可視化するためのイベントも開催できればと考えている。