高大連携歴史教育研究会の発足にあたって(2015.8.5)

ご挨拶

 去る7月26日、東京大学駒場キャンパスにおいて高大連携歴史教育研究会の創立大会が成功裏に開催された。当日までに登録された会員数は200名を超えたが、当日は、猛暑の中を、北海道から沖縄に至る全国各地から130名の会員が出席され、各種の部会などに分かれて、大変熱心な議論を交わした。

 出席者の名簿によると、大学教員が66名、高校中学教員が53名、教科書出版社が8名、予備校・研究所関係者が6名、大学院生が11名(うちスタッフ6名)、マスコミ関係者7名、不明1名の合計152名であった。当日は、呼びかけ人会を昼に開催した後、全国各地の歴史教育関連の地域別・教科別研究会連絡委員会を開催し、連絡委員の派遣を決定した7研究会の活動状況が報告された。次いで、5部会に分かれて、活発な討議が交わされたが、その内容は、各部会の報告をご覧いただきたい。

 部会の終了後、連絡委員会から選出された委員長・副委員長、各部会で選出された部会長・副部会長に編集長候補と会計責任者候補をくわえた14名からなる運営委員会が開催され、総会に提案する規約案や会長・副会長などの役員選出のあり方を検討した。その結果、全国各地から多様なメンバーが参加した研究会だけに相互の交流期間をもった上で、すべての役員を選出した方がよいとの判断から、創立大会では、1年任期の暫定執行部を選ぶにとどめ、来年の大会で2年任期の正式執行部を選ぶ方針を総会に提案することになった。

 総会では、冒頭、日本学術会議副会長の井野瀬久美恵氏、日本歴史学協会歴史教育特別委員会委員長の近藤一成氏から高大研の発足を祝う挨拶をいただいた。その後、規約案が若干の修正のうえ承認された後、今回選出する執行部は1年任期の暫定的なものとすることも了解された。その後、会長の選出に入ったが、立候補者がなかったため、運営委員会から原案提案者の一人である油井が推薦され、総会の承認をえた。会長に選任された油井から、副会長として大阪大学の桃木至朗氏を推薦する旨の提案があり、了承された。

 なお、事務局を当面、大阪大学においていただく関係から、運営委員長は桃木副会長が兼務することが承認された。また、規約によれば、副会長は若干名(高校教員や分野の異なる会員など)を選出することになっているが、今回の執行部は1年任期であることから、当面、空席とすることも了解された。さらに、油井会長から、電子版会報・会誌の編集長として池上大祐氏(琉球大学)、会計責任者として中村翼氏(大阪大学)推薦され、承認された。その後、池上編集長から会報にするか、会誌にするかの編集方針が提案され、今後、詰めることになった。また、中村会計責任者から予算案が提案され、承認された。

 総会終了後には、会場を移して、懇親会が開かれたが、会場が満員になるほどの盛況であった。まず、開催校を引き受けて下さった東京大学の外村大氏からご挨拶があり、大変ご苦労をいただいた杉山清彦氏以下のスタッフも紹介された。その後、神戸大名誉教授の髙橋昌明氏の音頭で乾杯が行われ、懇談の後、全国歴史教育研究協議会からは澤野理副会長、歴史教育者協議会からは君島和彦福委員長、日本社会科教育学会からは坂井俊樹会長など、関連団体の代表から高大研発足の祝辞をいただいた。

 このように、高大研の結成は多くの方々から歓迎され、今後の発展が期待されていることが痛感された。高校と大学の壁を超えて、共通の課題を討議し、必要な改革案を提起してゆく場がようやく設定されたことを歓迎する声が書く諸で聞かれた。また、従来、ともするとトップダウンで行われてきた印象の強い教育行政に対して、現場の声をボトムアップで伝えてゆく新しいチャンネルの登場に期待する声もあった。しかし、この新しいチャンネルが活かせるかどうかは、ひとえに各部会などで検討される様々な改革案が適切なタイミングで、現実に根ざした説得力のあるものになるかどうか、にかかっているのであり、結成大会で示された熱い熱気が今後も持続され、改革提言のとりまとめに活かされることを期待している。

油井大三郎(東京女子大学)